概要[]
ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-(The Lost World)は、マイケル・クライトンによる小説で「ジュラシック・パーク」の続編である。
映画版「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」の原作であるが、後述する理由から内容は大きく異なっている。
執筆されるまでの経緯[]
今も昔も大ヒットした作品はすぐ続編を出して利ザヤを稼ぐが当然という風潮が存在するが、この小説の原作者であるマイケル・クライトンは元来、自身が手がけた作品の続編を書くことに消極的であり、その流儀は1990年に発表した「ジュラシック・パーク」が空前の大ヒットを飛ばした時であっても同様であった。
ところが、この小説を読んだファン達は、事あるごとに「ジュラシック・パークの続編はまだなの?」「早く続きを書いてよ!」といった要望をクライトンに対して山のように送っていたらしく、さらに1993年に公開された同名の映画が空前絶後の大ヒットを記録したことで益々ファン(+映画関係者たち)のリクエストが殺到する事態に見舞われてしまった。
この凄まじいまでのリクエスト攻撃を前にして、ついにクライトンは自身が長年守ってきたセオリーを破って続編を書くことを発表。 こうして1995年に発行された本こそが、ここで紹介している「ロスト・ワールド -ジュラシック・パーク2-」である。
内容について[]
タイトルからも分かる通り、この作品は映画版「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」の原作にあたるのだが、内容は双方ともに大きく異なっている。
例えば、主人公が前作のアラン・グラントに代わって、イアン・マルコムとなっている点こそ共通しているが、その他の登場人物は、マルコム・サラ・エディ・ケリーを除いて本作には一切登場しない。 しかもこの4人ですら映画版と比べてキャラクター設定や活躍が大きく異なっている。
作品内容自体も、恐竜が巣食う島で息もつかせぬサバイバルが魅力だった映画版とは異なり、時たまアクションを挟むものの本編のほとんどをマルコム、もしくは小説オリジナルキャラクター「リチャード・レヴィン」が立てた仮説をもとに「生命の進化はなんたるか」「何故恐竜を含めた生物の絶滅が起こったのか」といった議論が交わされるといった、少々堅苦しい内容となっている。
とはいえ、頭からつま先まで小難しい内容が満載のつまらない内容かと言えば決してそんな事はなく、職人気質の頼れるオヤジ風のキャラ「ジャック・ソーン」や、前作に登場したバイオシン社の鬼畜学者こと「ルイス・ドジスン」、ハッキングが得意な天才少年こと「アービー・ベントン」などの魅力的なキャラクターに加え、彼らが抱く複雑な人間関係および心情から成される重厚なストーリー。 そして島に巣食う恐竜たちの襲撃を掻い潜り、あの手この手でなんとか生き残ろうと画策する登場人物たちの熱い攻防など、読んでて心躍らせる展開自体はちゃんと用意されている。
現在、文庫本やデジタル書籍などがお求めやすい価格で発売・配信されているため、興味のある方は是非とも一度失われた世界への1頁をその手でめくっていただきたい。
登場人物[]
今作の主人公で数学者。 年齢は39歳。
前作で死にかけた(というか実際問題死んでた)影響から、過去のトラウマを容赦なくほじくり返してくるレヴィンを嫌っている。 しかしその一方で恐竜に対する興味が尽きたわけではなく、むしろ事件がを経てなお燃え盛っているご様子。 そのため行方不明になったレヴィンを捜索するためにイスラ・ソルナ島を訪れた際は、恐竜を目の当たりにして妙にハッスルしていたほど。映画版マルコムが見たらどんな反応をするのやら...
プリストン大学の助教授を務める動物行動学者で、年齢は33歳。 作中における主人公その2。
普段はアフリカにてハイエナの生態について研究するなど、根っからの行動派学者として描かれており、その時に培った経験をフル活用してイスラ・ソルナ島にて大活躍。 そのためマルコムよりも主人公しているキャラクターだったりする。
本作限定のオリジナルキャラクター。
頭は切れるが傲慢かつ強欲な性格のため、周囲からは「金持ちのボンボン」と呼ばれ嫌われている。 [1]
- ジャック・ソーン(ドック)
「ソーン・モービル・フィールド・システム」という会社を営む応用工学の元教授。
普段は昔気質の職人ジジイといった感じで、部下に対して口汚く怒鳴ったりすることもあるが、実際は非常に仲間思いでかつ頼りになるイカした漢である。[2]
ソーンの会社で働く若者。
典型的な都会っ子で、非常に慎重な性格。 そのため自ら進んで危険地帯に赴くことはないが、いざという状況になったら命を捨てる覚悟で仲間のために尽くすなど非常に勇猛果敢な人物である。
- アービー・ベントン(R・B・ベントン)
角ぶちメガネをかけた黒人の男の子。 愛称はアービー、もしくはアーブ。
わずか11歳ながらも類まれなるコンピューターの知識を有する天才少年。 しかしその反面、レヴィンが約束を守らなかったことに対して不満をこぼす純粋さや、予期せぬ事態に見舞われた際にパニックを起こしたりと、年相応の感性は持ち合わせている。[3]
アービーと同学年の少女。 年齢は13歳。
数学が得意だが、その事についてコンプレックスを抱いており、クラスメイトからはいじめまがいの陰口を叩かれている。 そのため自分に自信が持てず鬱屈とした生活を送っていたが、ひょんな事からソルナ島へと赴く事になり、そこで憧れの存在であったサラと出会ったり、恐竜との攻防戦を繰り広げていく中で精神的にも大きく成長。 今作における真の主人公たる存在として活躍した。
バイオシン社のイカれた学者。
前作において恐竜の胚を奪ってくるミッションに失敗して以後、虎視眈々とチャンスが巡るのを待っており、ついにレヴィンがソルナ島の存在を突き止めた事から行動を開始。 今度は自ら部下を率いて恐竜の卵を奪うべく暗躍した。
バイオシン社の社員で、ドジスン直属の部下。
元々はエリート街道を突き進む学者だったが、紆余曲折あってその道から外れてしまい、評判の悪いドジスンの配下になったという過去がある。
スタンフォード大学の教授で生物学者。
普段はメディアの舞台に立って、高説を垂れるなどテレビのコメンテーター的な存在として有名な人物。 その知名度を活用して巷で囁かれている「ジュラシック・パーク事件」を否定し、火消しを行ったことが関係者の間では広く知れ渡っている。
前作にも登場したエール大学のフィールド生物学者。
コスタリカの海岸にて打ち上げられた謎の死体へレヴィンを案内する役割として登場。
- エリザベス・ジェルマン
サンフランシスコ動物園の白亜研究棟にて勤務する科学者で、マルコムの知り合い。
年齢は不明だが、若くして主任を任されてほど有能な人物らしい。
- エド・ジェイムズ
ドジスンが雇った探偵。
作中序盤にてレヴィンの動向を調査する目的で登場。 ソルナ島に部隊が移ってからは登場しない。
レヴィンがソルナ島へ赴くために雇った現地ガイド。
マッシブな体格が自慢だったそうだが、島にいた恐竜の前にはなす術もなくあっさり襲撃され死亡した。
登場する恐竜[]
島にて生息する普遍的な恐竜として登場。 何故か成体より亜成体の方が多いようだが...?
コスタリカの海岸にて打ち上げられた死骸として登場。
ただしこれが本当にオルニトレステスだったかどうかは不明で、島に上陸後一度もこの恐竜が出てきていないこと。 そして体色が緑色であったことから実際はラプトルの誤認だったのではといった疑惑が持たれている。
ご存知、ジュラシック・パークを代表するダチョウもどき。
ただし生体は登場せず、名前のみの登場に留まった。
職員村あたりをナワバリにしていた肉食恐竜。
周りのものに擬態するカメレオンのような能力を備えており、暗闇においてはほぼ完全に周囲の環境と同化することが出来る非常に厄介な存在。
島に生息する草食恐竜として登場。 映画と違い、あまり群れで行動しない恐竜として描かれている。
今作では2頭の成獣に加え、3頭の子供が登場する。
島に生息する草食恐竜。
今作ではマルコム一行が初めて目撃する恐竜として登場。 映画版におけるステゴサウルスの役割を担った。
ご存知、石頭恐竜。
今作ではやや好戦的な性格として描かれており、車を取りに来たサラに対して襲いかかってきた。
ご存知、プレスリーみたいなやつ。
今作では群れで生活する姿が描かれており、それを見たレヴィンが感動のあまり行った行動によって...?
観察小屋を設置するレヴィンらが遠巻きに目撃する恐竜として登場。 出番はたったこれだけである。
今作では「プロコンプソグナトゥス・トリアクシス」という架空の生物として登場。 前作同様、神経毒を用いて弱った獲物を集団で襲いにかかる。
営巣地にて子供の世話をするなど、我々がよく知るマイアサウラ像を披露。 だがそんな優しさに突け込まれる形で、ドジスンらに卵を奪われてしまった。
島に上陸したレヴィンが初めて遭遇した生きた恐竜。 このシーン以降は一切登場しない。
ご存知、シリーズの手強い敵恐竜。
前作の時点で十分脅威的な存在だったが、今作においてもその強敵っぷりは変わっておらず、凄まじいパワーと卓越した頭脳。 そして人間をも嘲笑う狡猾さを以てして、マルコム一行に襲いかかる。
前作との差異点[]
正直、映画との共通点を挙げるのが難しいくらい内容が異なっているため、ここでは代表的なものをピックアップして紹介していく。
- 登場人物および、作中の展開が大きく異なっている。
- 本作における一番の差異点。 なお高所より恐竜を見渡せる観察小屋やハイテク技術を詰め込んだトレーラーの存在。 子供を攫われたと勘違いしたティラノサウルス親子にマルコムらがトレーラーごと襲われるシーン。 職員村におけるヴェロキラプトルの攻防戦など映画で見たような設定、シーン自体は一応存在している。
- 前作で死亡したと思しき描写をされていたマルコムが生きていたことが判明。
- 本人曰く「危なかったけど、
大人の事情で何とか助かった」とのこと。
- 本人曰く「危なかったけど、
- 前作のラストで、パーク関係の生存者(グラント博士ら)は口封じのため、一生軟禁生活が続くことを示唆するような台詞があったが、本作では特殊な取引で釈放されたことになっている。
- 彼らのその後については作中、探偵のエドより詳細が明かされた。
- 映画版では1匹しかいなかったティラノサウルスの子供が、今作では3匹となっている。
- なお物語開始時において生まれていたのは2匹だけで、残りの1匹は物語の最終盤にてしれっと孵化したという形で登場した。
- オルニトレステス、アパトサウルス、カルノタウルスといった映画に出ていない恐竜もいくつか登場している。
- その中でアパトサウルスは、今作における非常に重要なカギを握る存在として、カルノタウルスはマルコムらを脅かすボスキャラとして、作中で大活躍した。
脚注[]
関連項目[]
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cs:Ztracený svět (Crichton) fi:Kadonnut maailma (Michael Crichton) no:Den tapte verden (Michael Crichton)